Field & Technology 〈技術情報〉

エンジニア技術レポート

Engineer's Report SP04
野球場のマウンドは球場により違う
よく高名なプロ野球選手の話で、よくこんなことを耳にします。

「●●球場のマウンドは低い・・・」または高いとか。

そんなことが本当にあるのでしょうか?

「公認野球規則」ではマウンドの高さは、ホームベースを基準としてそこから254㎜の高さであり、また、ホーム方向への踏み出しの勾配も規定されています。
 
ピッチャーマウンド平面図
 
A-A断面図
上の図は、昭和62年1月通達によるものです。
 
 
この通達により、野球関連の8団体では、昭和63年のシーズンからはこの共通ルール形状のマウンドでプレーすることとなりました。

昭和63年は、東京読売ジャイアンツのホームグラウンドが後楽園球場から東京ドームに変わり、ソウルオリンピックでは野球が公開競技として 行われた年でもあります。

実は、このマウンドの高さの規定にも変遷があり、本場アメリカでは当初15インチ以内とされていたものが、1950年(昭和25年)には15インチ(381㎜)と規定されています。その当時は高さの規定だけで、勾配の規定はありませんでした。

ところが、この高さではピッチャーに有利となり、野球を興行とするアメリカではホームランを量産できるように、つまり打者優位となるように1969年には10インチ(254㎜)に下げられました。

しかし、日本ではこの後も15インチ(381㎜)ルールが約20年間使われ続けました。

15インチのマウンドというだけで勾配の規定は無かったため、ゆるい勾配や急勾配のマウンドの球場が散在することになってしまいました。

ピッチャーの感覚では急勾配は高いマウンドに見え、また、ゆるい勾配では低いマウンドに感じられたに違いありません。

現在では、高さも勾配も厳密に規定されていますので、高いとか低いとかは無いはずです。

しかし、感覚的な錯覚を起こさせる状況があるのです。

周囲の観覧席などの勾配や距離感などの状況に加え、ホームベースからバックネットまでの勾配は球場により異なるため、敏感なピッチャーほど高く感じるマウンド、低く感じるマウンドは存在するとも言えます。

また、このほかにも屋根付球場のマウンドと屋外球場のマウンドでは少し形状が異なります。
 
 
上の図は野球規則に載っている形状のマウンド断面図。

下の図は屋根付球場に良く見られる形状のマウンド断面図。

いずれもルールブック上で許された形状です。
 
 
※形状の違いを解りやすくするために縦の縮尺を横の5倍にして解析しています。
 マウンドの高さと踏み出しの勾配は同じでも、下の図のほうがより高く感じることでしょう。

※ 1/12の勾配とは 1フィートで1インチの勾配を示す。
 
こうしたアメリカ発世界共通の規定がミリ単位で遵守されているにも関わらず、敏感な人間の感覚が、高いマウンドと低いマウンドを自ら生み出す理由と推測されます。

※このマウンド高さの変遷は、「野球場大辞典」の著者で 野球場研究家の沢柳正義氏より私が伺ったお話を元に再調査したものです。





 
専務取締役;後藤 正臣 (ごとう まさおみ)

昭和30年3月13日生/日本工業大学工学部・建築学科 卒

武蔵丘短期大学客員教授(スポーツ施設論)
(公財)日本体育施設協会 体育施設管理士養成講習会 講師
(公財)日本体育施設協会 屋外体育施設部会 技術事業委員会委員長
(一社)日本運動施設施設協会 登録運動施設基幹技能者登録講習会 講師(平成22年~現在)
NPO法人 スポーツ施設サイエンス三重研究所 理事 主任研究員

資格等:一級土木施工管理技士/一級建築施工管理技士/一級造園施工管理技士/体育施設運営士(公)日本体育施設協会/建設マスター



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